桜風涼(渡辺健一)の録音ノウハウ集

Ultra Sync vs Tentacle Sync どっちがいい?

wataken2003

イギリス製のUlrtaSyncとドイツ製のTentacleSyncの両方を購入したんだ。
さて、どちらがいいだろう?

まず先に、タイムコードシンクロの基本をちょいとだけ説明しておこう。タイムコードシンクロのユニットは、動画のフレームレートに同期する時計が内蔵されていて、それを基準にタイムコード信号を出力する。カメラにそれを入力すると、それをメトロノームのように使って、カメラはシャッターやコマ(フレーム)を送る。レコーだーは、そのメトロノーム(タイムコード)をファイルに記録してくれる。そして、編集時には、そのタイムコードを使って動画と音の位置合わせを行うという仕組みだ。
いずれにせよ、基本的には同期したい機器の数だけユニットが必要になる。ケーブル接続を行うのであれば、ケーブルを分岐して複数台を1台のユニットで同期することも可能だし、ユニットを使わずに、レコーダーのタイムコード出力をカメラにケーブル接続してもいい。

カメラにタイムコード入力がない場合には、音声トラックに音声タイムコード(LTC)を記録して位置合わせを行う。つまり、マイク端子や音声入力端子にタイムコード信号を音声で入力する。音声タイムコードをLTCと呼ぶ。
これを使った位置合わせをLTCシンクロと言うんだけど、LTCの入った動画の場合、カメラが自動的に記録する実際のタイムコードと、LTCは全く違う物だし、実際の動画フレームとLTCのフレームの頭が一致しているわけでもない。
そこで、動画に自動的に記録されるカメラが付けたタイムコードではなく、LTCを基準に音声の位置合わせをさせる専用アプリが必要になる。

そんなLTCの仕組みを頭においてもらって、両製品の概要から書いておこうかな。

左からUlrta Sync One、Ulrta Sync Blue、Tentacle Sync E

Tentacle Sync Eは低価格なオールイン・ワン

Tentacle Sync Eは、基本的にはJam同期ユニットだ。どういうことかというと、電源投入時は外部の同期信号待ちになって(ランプが赤点滅)、ステレオジャックから信号が入って来ると、それで内蔵時計を書き換えて、外部と同じ時計を刻み始める。この状態でケーブルを抜いても、内部時計はそのまま進んでいく。このように外部信号を受けて内蔵時計を同期させるやり方をJam同期と言うんだ。
ちなみに、ZOOMのF6やF8nも外部の信号でJam同期が可能なので、Jam同期が済んだTentacleユニットを繋いでF6やF8nをJam同期することができる。

Tentacle Sync E ユニット同士をステレオケーブルで繋ぐと、どちらか一方が自動的に親(ホスト)になり、もう片方(子)はホストの時計をコピーしてJamする(クライント)。
同期されるとTentacle Sync Eのランプが緑の点滅して、2つとも同じ時計で同期したことになり、ステレオジャックからLTC信号を出力し始める。片方(どちらでもいい)をカメラの音声端子に繋ぎ、もう1つはレコーダーのタイムコード入力へ繋ぐ。レコーダーにタイムコード入力がない場合には、カメラと同じように音声入力にすることできる。ただし、この場合には複数の音声トラックを持ったポリフォニックファイル形式にする。

また、Tentacle Sync E はスマホとBluetooth接続すると、ケーブル接続することなしに複数のユニットを一気にJam同期することができる。この場合、タイムコードの開始値などをマニュアルで決められたり、世界標準時に指定したりすることが可能だ。スマホで同期した方が、なにかと便利だぜ。

Tentacleの場合、ユニットを購入すると、その製品シリアルで、LTC用アプリ(Tentacle Studio)を無料で使えるぞ。つまり、Tentacleはオールイン・ワンですな。ユニット2個入りパッケージが5万円程度だよ。安いのもTentacleのとメリットね。

Jam同期でマルチカメラ撮影が楽になるぜ

ユニットが1つあれば、まずレコーダーとJam同期して、そのユニットをカメラに繋ぐことで、カメラとレコーダーがテイムコードシンクロできる。ただし、Tentacleの時計の誤差とレコーダーの誤差は微妙に異なるので、長時間の撮影の場合には、Tentacleを2台使って、カメラ用とレコーダー用に繋いだ方がベター(あまり変わらないけどね)。

カメラが複数台ある場合には、レコーダーはJamして、カメラの台数だけユニットを用意すればいい。また、レコーダーをホストにするなら、レコーダーと近いカメラにはケーブル接続して、離れたカメラだけTentacleユニットで同期するということもできる。

UlrtaSyncはリアルタイム同期だ

一方のUlrtaSyncは、ユニット同士が常に無線通信を行なって同期を行う。それゆえ、ホストとクライアントは、我々がマニュアルで設定しておく必要がある。なので、Tentacleに比べると、初期設定がちょっと面倒だ。
でも、一度設定さえしてしまえば、TentacleのようなJam同期ではないので、電源を入れただけで自動的に同期されるんだ。超便利! 言い換えると、Tentacleは電源投入時にケーブル接続をするか、スマホアプリでJam同期をする必要があるけど、UltraSuncの場合には、ただ電源を入れれば同期される。

ZOOM社のレコーダーはUlrta Sync BlueとBluetooth接続することができる(F8nとF2-BT以外はオプションBTA-1が必要)。F6やF8nのように外部TC入出力端子がある場合にはケーブル接続のUlrta Sync Oneを使うこともできる。

カメラとLTC同期するにはUlrta Sync Oneが必須になので、予算が限られているなら、まずこちらを購入するべきだ。ただし、1台5万円弱。Ulrta Sync Blueはケーブル接続できなからね。
ZOOM製品を使う場合、余裕があるならUlrta Sync Blueは超便利だ。F2-BTやH3-VRを同期するならこれが必須になるぞ。余談だけど、Ulrta Sync BlueとUlrta Sync Oneは、専用電波で通信して同期する。メーカーではRF接続と呼んでいるよ。

結局、どっちがいいの

さて、Tentacleと比較するとUlrta Sync の方が割高なんだけど、F2-BTを使いたいなら、こちら一択。それから、こちらは非常に拡張性が高くて、Ulrta Sync :Palus(12万円くらい)という基地局ユニットを使うと、ZOOMのレコーダーのスタート・ストップを無線で制御することもできる。カメラにTC入力があれば、カメラの録画オンオフも可能。つまり、放送局で使えるシステムってことね。マルチカメラ収録の究極の姿なのだ。割高な分だけ、機能が充実ってことだ。

それからUltra Syncの場合、LTCの同期アプリは他社製のものを別途購入する必要があって、こちらは2万5千円くらい。そのアプリを購入するなら、Tentacleのユニットを1個買う方がいいぞ(同じくらいの価格だ)。シリアル入力で無料で使えるTentacle StudioはUltraSyncで同期したファイルを扱えるからね。そんでもって、Ulrta Sync OneとTentacle Sync EのJam同期も電源を入れたときにケーブルを繋ぐだけでOK。つまりUlrta Sync とTentacleは混ぜて使えるってことだ。

結局のところ、とりあえずフィールドレコーダーとカメラを同期するだけなら、Tentacleが安価でいい。無料でアプリを買えるから。F2-BTを使うかどうかでUlrta Sync にするかどうかが分かれるのと、Ulrta Syncの方が圧倒的に楽ちん。本体に液晶画面があるので、ちゃんと動いているかどうか一目瞭然だし。

ということで、まず、タイムコード同期をやってみたいという人は、まずTentacleを買ってみる。それで専用アプリの便利さを体験してもらいたいな。そして、拡張してゆくならUlrta Sync Oneを足してみるといいんじゃないかと思うぞ。

32bitフロート録音TentacleUlrtaSyncZOOM F2ZOOM F6タイムコード同期

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